IGARASHI WORKS
Produced by Toshiaki Igarashi
Distributed by Maruko Shoji

しばらく、ショップで見掛けることが無かったイガラシブランドのポリプテルスが本年2009年6月、エンドリケリー・ギニアベイスン(限定売出し数110匹)の作出に続き、イガラシ・デルヘッジの繁殖が行われた。

昨今のアクアリウムホビーの環境下において大型魚や古代魚は以前のような”ひっぱりだこ状態”といったことでは決してない。
又、東南アジアの需要バランスを度外視した大量生産による異常なまでに安価となったポリプテルス類が市場に投下されている中、五十嵐氏にとっては大きな逆風を承知した上でのカムバックであったに違いない。

弊社にしても、長いブランク後のマーケットリリースということで、販売を開始する前はどれだけのショップさんに取扱いをしていただけるのか?現実的に市場がイガラシ・ブランドを受け入れてくれるのか?・・・期待はしていたが、少なからずの不安もあった。
だが、そういった不安も五十嵐氏から不鮮明(笑)ながらも定期的に送られてきた魚の成長度合を知らせる為の携帯写メールで個体のクォリティの高さを確認ができ、「これなら大丈夫!」と不安はいつしか打ち消されていった。

エンドリケリー・ギニアベースンは当初の予想に反し、納品された100匹は短期間で完売した。その後、五十嵐氏が秘蔵していた10匹も追加納品された。
そして、本年12月!イガラシ・デルヘッジ2009が発売される。発売予定日を前に多くの問い合わせ、仕入予約が届いている。
無論、すでに十数年前となる熱帯魚ブーム時に販売した匹数には到底届かない程の小ロットではあるが、我々としてもイガラシ作品の根強いファンがいる限り、その品質と素晴らしさをイガラシブリードを知らない方々に対しても再度広めていきたいと考えている。

丸湖商事株式会社
平成21年11月


五十嵐氏の繁殖証明書(エンドリケリーギニアベイスン)


五十嵐利明氏へのインタビュー

※五十嵐さんが熱帯魚を飼育し 始めたきっかけは?

本来、爬虫類と魚類が好きだったのですが、私が小学生の時に父が熱帯魚を飼い始めまして、車で店を廻ったり、本を読んだりして、小学校6年の時には自分で飼っていましたね。
ワニはそれ以前から飼っていましたが・・・
熱帯魚は生体はもちろんですが、本が好きで中学の頃になると、とにかく詳しくなりたくて、例えば学名を覚えるのに一生懸命になり、かなり積極的だった記憶があります。なぜか、発音にも拘りましたね。
図書館では、貸出カードが私の名前で埋め尽くされたものもありました

※アフリカ産淡水魚にこだわる理由は?

私の魚人生を方向付けたのは、ポリプテルスの存在ですが、子供の頃からワニ類、特にナイルクロコダイルの飼育に憧れ続けておりました(後に3亜種を飼育)。
アフリカの水辺への憧れがその原点であるのかもしれません。
ポリプテルス以外にも肺魚やナマズ、モルミルス、カラシンからシクリッドまで、多くのアフリカ種を手掛けてきましたが、その地域ならではの共通性を感じます。ポリプテルスを突き詰める上で、アフリカの淡水魚類に関する学術文献を、生体以上に精力的に集め出して20年以上経ちますが、こうして資料もある訳ですし、もちろんこれからも可能な限り集めたいと思っていますし、また実際にアフリカへも行ったりしています。
今後もアフリカへは行きます。他の魚種との関わりもアフリカンに絞り込もうと思っています。そういった意味で、これは私にとってこだわりではなく、必然的なことであるのです。

※五十嵐さんがポリプテルスの繁殖を始めたきっかけは?

大学との学術研究がきっかけです。性分化の機構を調べるとか、色々な課題がありました。昨年、東京農大から刊行された一般向け学術書に、当時を振り返る形で執筆させていただいてもいますが、とにかく卵や仔稚魚、幼魚のサンプルが大量に欲しかったんです。
欲しければ、増やすしかない!
今でこそ国内外での参考になる情報は数多くありますが、当時はほぼ皆無でした。結果的に私の手元で同日に2種の繁殖に成功したのですが、この成功を経て、卵を産卵直後から孵化までの60時間を2時間ごとに固定、更に孵化後の一か月間を24時間ごとに、その後の約半年間を数日ないし1週間ごとに固定して、計500粒、700個体からなるステージ標本を作成することが出来ました。
今でも大学で保管されていますが、当時はもとより、現在でもここまで完成度の高い標本は知られていません。初期の研究は、日本魚類学会や欧州国際魚類会議などで発表しております。

※今後のブリーディングについては?(デルヘッジとか?)

例えば、P.デルヘッジ(デルヘッツィないしデレーツィ)は、10年以上前から、本当に時々ですが、繁殖させていました。今後、本格的に手掛けるならば、エンドリケリー同様に種類は野生個体を基本にしたいと思います。
しかし、この種に関しては、更にF2も視野に入れてもよいのではないか?その場合、種親は手元の繁殖個体に限定していくつもりです。
先日、知人にトップグレードの出現が予測される、手元のとある野生個体を見せたのですが、普段は冷静で、背鰭19本のビキールを見せた時でも「おぉっ!」位な反応だったのが、この時には「何なんですか?この個体は!凄すぎるにも程がある!」と言っていました(笑)
実際、私が過去に知るデルヘッジの中で、横帯の太さ、長さ、濃さにおいて最も完成度が高い個体だったと思っています。
あと、もちろん正規ビキール(ビシール)の繁殖ですね。何といっても、この産地の政府公認個体は私のところにしかいませんから。70センチ級の魚の追尾は凄いですよ!

※今後、やりたいことは?

アフリカの為になることが出来るといいですね。
現実的なところで考えているのは、将来、手元の資料はナイロビ大学かケニア国立博物館に寄贈しようかとか、附属の水族施設で「古代魚展」をやりたいとか、色々あります。
スーダンで採集したポリプテルスがいたが死んでしまったというので、この施設には生体を寄贈しています。
因みに、魚類学史上2例目となる背鰭19本のビキールは、学術標本としての条件を完璧に満たしていることから、いずれケニア国立博物館に収めようと思っております。当初ロンドンの自然史博物館かベルギーの中央アフリカ博物館あたりを考えていたのですが、やはりナイロビかなと・・・
あと、すぐには無理ですが、私の集大成として、時代を通して世界的に読まれるような
本を出せたらと思います。
和英両文で、ケニアの研究者との共著とか・・・
いずれにしても、ポリプテルスに関しては皆様に最も信頼頂けるように、そして楽しんで頂けるように、努めていきたいと思っております。
五十嵐利明プロフィール
いがらし としあき
1958年、東京生まれ。ポリプテルス研究家。ブリーダーとしても広く知られる。
1988年に、18世紀末のナポレオンのエジプト遠征における生物学上最大の発見と称されるP.ビキール(ビシール)の生体カラー写真を世界で初めて発表する。2002年には本邦初となる生体の正規導入を行い、繁殖に取り組んでいる。
著書に「古代魚を飼う/共著 マリン企画」、「JURASSIC FISHES/共著 TFH」、「古代魚総覧/共著 ピーシーズ」、「今を生きる古代型魚類/共著 東京農業大学出版会」などがある。





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